2025年12月、北欧フィンランドで発生した「つり目ポーズ」人種差別騒動は、SNSで世界中に拡散され、大きな波紋を広げました。

騒動の発端は、ミス・フィンランド2025年のサラ・ザフチェさんがSNSに投稿した写真でした。
写真では、彼女が両手で目尻を指で引っ張る仕草をしており、「中国人と食事中」というキャプションが添えられていたと報じられています。

ミス・フィンランドのザフチェさんと、SNSで物議を醸した写真。[EPA=聯合ニュース・SNS キャプチャー]
これが東アジア人への人種差別的なジェスチャーとして受け取られ、大批判に発展。
本人は
実際は頭痛でこめかみを揉んだだけ。それを面白がった友人が撮影したもの。
という釈明をしましたが、事態は収まらず、ミスの称号は剥奪されました。
さらに連立与党内の右派政治家らが同じ「つり目」ポーズの写真をSNSに投稿し、ザフチェさんを支持する姿勢を見せたことで、騒動は政治問題としても拡大。

この動きが国際的な批判を招き、フィンランドのペッテリ・オルポ首相が公式にアジア諸国に対して謝罪する事態にまで発展しました。

なぜ「つり目ポーズ」は問題なのか?
両手で目尻を強調するこの仕草は、欧米圏では「スラントアイ」「アジア人の目を揶揄するジェスチャー」として歴史的に人種差別的な意味を持つとされています。
西洋の植民地主義や人種分類の歴史の中で、東アジア人の目の形が「異質」とされ、差別的な象徴として用いられてきた側面があるからです。
こうした背景があるため、単なる「仕草」のつもりでも、当事者ではなく受け取る側の歴史的文脈を理解せずに行うと大きな誤解や傷を生むことがあります。
欧米でのステレオタイプ — 仕草や描写の背景
この騒動は単発の事件ではなく、長年にわたる文化的ステレオタイプの積み重ねが背景にあります。
欧米メディアや広告、芸能作品などで東アジア人が描かれる際、しばしば目の形や顔立ちが強調されたり、誇張されたりすることがあり、これが差別的な印象を与えることがあります。
例えば、過去にはスポーツ選手や公共の場で、同じ「つり目ポーズ」が侮辱的行為として批判された例もあります。
セルビア女子バレー代表がアジア大会出場を祝って撮影した集合写真で、選手たちが目をつり上げるポーズをして炎上したケースがあり、国際連盟がその無神経さを認めたこともありました。


elle girlより 常にフェアプレーが求められるスポーツの世界で、ある選手の「アジア人差別」的行為が問題になった
欧米人はどう日本人を描写する?
欧米圏で日本人や東アジア人を表現するとき、仕草や外見に関するステレオタイプが長く存在してきました。
ただし、すべての欧米人がこういった視点を持っているわけではありませんし、文化圏や個人差があります。
多くの欧米人は、日本人やアジア人に対して
目の大きさや色
異なる顔立ち
異国的な服装や文化的な仕草
などの視覚的な特徴を面白がって語ることがありますが、これは必ずしも差別意図を持っているわけではありません。
むしろ、欧米アニメや映画で独特のスタイル(大きな目の描写など)が人気になったこともあり、そこから誤った一般化が生まれる場合もあります。
一方で、歴史的背景や人種的敏感さを無視して仕草を真似ると、差別的表現として受け取られることがあるという事実も知っておかなければなりません。
今回の騒動はまさにその典型です。
まとめ — 仕草と文化的文脈を理解することの重要性
今回の「つり目騒動」は、単なるSNSの投稿がきっかけでしたが、文化的な誤解やステレオタイプがどれほど人を傷つけるかを世界に示しました。
欧米での日本人や東アジア人に対する表現——仕草や外見をからかうような行為——は、歴史的に差別的な文脈を持つこともあり、軽率に扱うべきものではありません。
私たちは日々、違う文化や価値観が交わるグローバルな世界で生きています。
面白半分で真似した仕草や表現が、誰かを深く傷つけてしまうこともあるということを、今回の騒動は教えてくれます。

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