阿部詩 (あべうた)— 生い立ちから世界の頂点まで

スポーツ

阿部 詩(あべ うた)という名は、柔道ファンのみならず、多くの人々にとって「力強く、しなやかな柔道」を象徴する存在でしょう。

彼女の歩みは、幼少の頃の“ただの遊び”から世界チャンピオンへとつながる、泥臭くも輝かしい物語だ。

生い立ちと柔道との出会い

西スポwebより 幼い頃の三兄妹

阿部詩は2000年7月14日、兵庫県神戸市に生まれた。幼い頃の彼女にとって柔道は「兄たちについていく場所」でしかなかった。

家族は父・母、そして兄が二人。特に次兄である阿部一二三は、後に兄妹でオリンピック二連覇を果たす存在となり、詩にとって最大のヒーローであり目標であった。

ただ、柔道を始めた当初の詩は“サボり癖”もあったらしく、「練習に行きたくなくて、駄菓子屋さんの隅っこに隠れていたこともある」と本人が語ったこともあり、決して最初からストイックだったわけではない。

しかし、兄たちの真剣な姿に触れるうち、「強くなりたい」という気持ちが芽生え、競技として本気で取り組むようになる。 いつしか柔道が生活の中心となっていった。

学歴と成長の軌跡

阿部詩は夙川学院中学校・高等学校で本格的に競技柔道と向き合い、早くから全国的に注目される選手へと成長した。

中学時代からすでにセンスと実績は光り、高校では全国大会で上位に食い込む活躍を見せる。

その後、日本体育大学へ進学。

柔道エリートが集まる環境でさらに実力を磨き、高い技術・体幹・戦術理解を身につけていった。

大学時代は彼女が世界トップへと飛躍する重要な時期となり、国内のみならず国際大会でも存在感を示しはじめる。

柔道でのキャリアと栄光

幼少期スタートから順調に成長。

2015年の全日本ジュニアで入賞歴あり。 

2018年・2019年には世界選手権でチャンピオンに。これにより若くして世界のトップに躍り出た。 

そして、2021年の東京2020オリンピック(実際には2021年開催)では、女子52kg級で金メダルを獲得。女子柔道で、兄妹そろって金をとるという快挙を達成した。 

その後も世界選手権で複数回優勝、国際大会で安定した実績を残してきた。 

“攻撃的柔道”が持ち味で、力強く、しかも華麗な技を繰り出す彼女の姿は、多くのファンを惹きつける。

特に「袖釣込腰」や「内股」、寝技での粘り強さは強みだ。 

家族の支えと「チーム阿部」

詩さんの柔道人生において、大きな支えとなってきたのは家族、特に父母と兄たちの存在だ。

彼女の両親は、娘たち・息子たちが柔道に打ち込む環境を整えるために、実は大きな犠牲も払ってきた。

例えば、母親は喫茶店をたたんで上京し、娘の大学生活を支えた、というエピソードもある。 

また、兄である一二三さんは、東京オリンピック・パリオリンピックともに優勝を果たし、「兄妹で世界の頂点を目指す」という詩さんの夢に強い影響を与えてきた。

詩さん自身も、子どもの頃から「兄妹ふたりで金メダルを取ること」を公言していたという。 

兄妹だけでなく、家族全体で戦う──まさに「チーム阿部」の支えが、詩さんの強さとあきらめない精神の根底にあるのだろう。

最近の“報告”とファンの反応:「色々な事がありましたが…」

西日本新聞より グランドスラム優勝の阿部詩

2025年12月9日、彼女は国際大会グランドスラム東京で2年ぶりの優勝を果たし、自身のSNSでこう報告した――

試合までの期間、色々な事がありましたが、たくさんのサポートのお陰で勝つことができました。感謝しかありません

この投稿には、ファンや関係者から多くの祝福と励ましの声が寄せられた。

「おめでとうございます!」「とびっきりのお顔」「詩ちゃん最高!」といった温かいメッセージが多数。

詩さんの笑顔と復活優勝は、多くの人に希望と感動を与えたようだ。 

また、2024年のパリ2024オリンピックで予期せぬ2回戦敗退を経験。

しかしその後、ファンやサポーター、関係者の支えを受けて、再び柔道に向き合い直し、世界選手権・国内大会での復活を果たしている。 

この“揺らぎ”を乗り越えた姿こそ、トップアスリートとしての真価だろう。

彼女の魅力と、これから

詩さんが多くの人を惹きつけるのは、単なる技術や実績だけではない。

圧倒的な強さと攻撃的な柔道スタイル 家族とともに戦う「人間らしさ」

負けても、挫けず立ち上がる泥臭さと誠実さ

そして、何より「感謝」を忘れず、ファンや家族、支えてくれる人々へ真摯に向き合う姿勢

こうした人間味と、一流アスリートとしての凄みを兼ね備えているからこそ、多くの人にとって彼女は「憧れ」であり、「応援したくなるスター」なのだと思う。

そして今、2025年末のグランドスラム東京優勝をきっかけに、再び世界の頂を見据えている。

将来的には3年後のロサンゼルス2028オリンピック、あるいは世界選手権でのさらなる頂点──「チーム阿部」の夢はまだ終わらない。

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